女性が妊娠して産婦人科を訪れる時、学校生活以来初めての医療機関との接触の事があります。胎児にとっては、もちろん初めての検診です。つまり産婦人科医は、母親に対しても、胎児に対しても、もし毋児に病気もしくは、何らかの健康上の障害があれば、それを最初に見つける立場にあります。私が、国立循環器病センターに勤務していた時、専門家集団の中で、もしかしたら自分が一番一般医かもしれないと思いました。つまり、産婦人科医は、患者が女性であり妊娠しているというだけで、すべての疾患とつきあう事になります。相手が胎児であればなおさら、彼らを患者として認識しているのは産婦人科医だけです。　心筋症、原発性肺高血圧、もやもや病、動静脈奇形などは、過去に診断がついていないと、初診で気づく事はかなり難しいので、妊娠初診の患者様へは十分な問診と、基本的な理学所見を得るための診察を行います。　構築異常を伴う胎児の疾患については、超音波検査で多くの疾患の診断例が報告されています。まず、見つけてあげたい疾患は、妊娠中もしくは出生直後の処置により、転帰が大きく左右される疾患です。横隔膜ヘルニア、複雑心奇形、胎児水腫、などがこの中に含まれます。くわえて児の生存がほとんど期待できない疾患があります。無脳症がこの代表であり、重症の合併奇形を伴う染色体異常などもこの範疇と言ってよいでしょう。　無脳症は妊娠12―13週の経膣超音波で気づかれますが、複雑心奇形や横隔膜ヘルニアは20週前後のスクリーニングでは見つけたいものです。

2007年2月広島県産婦人科研修会講演抄録